創業50年神社仏閣設計施工 織戸社寺工務所日本の美と匠の技を未来に傳える

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施主様に学んで頂きたい社寺建築の基礎知識

前回のコラム「社寺建築で失敗しないために建築会社・工務店任せにしない」では、施主様にぜひとも最低限の「社寺建築の知識」を持ってもらいたいことを述べました。

それでは、「最低限の社寺建築の知識」とはどんなものでしょうか。ここでは、建立事業を成功させるために、施主様に持って頂きたい知識について紹介させていただきます。

「知は力」です。これらの知識を持っていれば、建築会社や工務店との打合せや交渉の中でも役に立つでしょう。

そして、他の建物を見て回った時にも、知識を持っていれば「どこを見るべきか」が分かり、ご自分の建物に当てはめて見ることができるので、完成イメージがどんどん明確になってゆきます。

施主様の心の中で、神社やお寺の完成イメージが明確になればなるほど、その建物は現実に建つ可能性が高くなるのです。

平面図の知識

平面図で見る「間取り」については、神社とお寺では違いがあり、宗派や主宰神、宗教的作法によっても変わりますが、ある程度、決まったパターンがあります。社寺専門書には、それらの平面図が掲載されていますので、現在の建物が、どれに該当するかを知っておいてください。また、各神社・各寺院における独自の祭典や行事があり、そのために平面図計画を考慮しなければならない場合は、教科書通りの事例を無視することもあるでしょう。

この平面図の知識を把握しておくと、神社・仏閣の宗派や主宰神について、その業者が正しい知識を持っているかどうかが分かります。

立面図の知識

木造建築の基本的な構造材としては、「土台」「柱」「桁」などがあります。それぞれの部材の太さは、建物の「カッコよさ」に関わる重要な要素です。

その中でも、外観の印象に大きく影響を与えるのが柱の太さです。どの程度の太さにするかは、建物の大きさや、高さによって決まります。また、屋根が大きく瓦葺きであれば、重量も増えるため、太めの柱にしなければなりません。

柱の太さを決める基準として「木割(きわ)り」がありますが、専門的でとても複雑なため、ここでは、私の宮大工としての経験に基づいて、カッコよく見える柱の太さはどの位なのかを紹介しましょう。

カッコよく見える柱の太さ

例えば、六坪程度(二間×三間)の神社の拝殿で一尺角の柱では少し太すぎると言えます。その程度の床面積なら、柱は六寸~七寸角ぐらいで、外観のバランスも取れると思います。

しかし、五十六坪(八間×七間)の本堂で六寸角では、外観を見たとき、少し細く見えると思います。一般的には七寸角以上、できれば九寸角ぐらいあれば、かなり立派に見えるでしょう。

また、さらに立派なものにしたい場合には、柱を「丸柱」にする方法があります。ただし、丸柱は、実寸よりも細く見えてしまいますから、角柱に比べて一、二割ほど太くする必要があります。

柱以外の桁や土台は、柱と同じか、一割ほど大きくするとバランス良く見えます。

やはり、施主様が気に入った建物の実物と見比べて、完成イメージの参考にするとよいでしょう。

立面図の知識を持って、いろいろな建物を見てみると、「この柱は細めだが、全体のバランスは良いな」とか、「この部材は太くて丈夫そうだが、離れて見るとアンバランスだ」などということが分かるようになってきます。

建物に使われる部材は太いほど耐久性が増しますが、費用がかさみます。細ければ耐久性が落ちる分、流麗になることもあります。また、建物の大きさによっても適性が違います。あるいは、個人的な好みでも違いが出てきます。「柱が太くて丈夫そうな造りが好きだ」「細身の部材を使い流麗な印象のほうが自分の好みである」など、施主様ご自身の趣味嗜好を優先することで、より満足のいく建物ができます。

立面図の知識を持つことで、ご自分が建てようと考えている建物に合う部材のイメージを創り上げることができるのです。

屋根の形の検討

また、社寺建築を見た時に、その建物の印象を決定づけるのが、何といっても「屋根」です。その「美しい形」と「反った線」は、見る人の目に最初に飛び込んできて、感動を与えます。

そして、さらに目を凝らすと、軒周りの納まりや、屋根の形状、細工の精巧さに目を奪われます。

「屋根」と「軒周り」には、いくつかのパターンがあり、専門書には詳細な説明がありますので、さほど苦労することなく理解できると思います。

「屋根」と「軒周り」については、お金をかけるほど、豪華絢爛な造りにすることができますから、良い建物や資料をたくさんご覧になって、「このような屋根にしたいから、ここまでは奮発しよう」という心づもりをしておくと、建物が完成するのが今から楽しみになるでしょう。

社寺建築ならではの特殊部材の知識

社寺建築に使われる部材は、一般住宅では使わない、特殊部材ばかりです。その名称をすべて覚えるとなると気が遠くなりそうです。しかし、そのような特殊部材のおかげで、誰もが一目で「お寺」「神社」と分かる、流麗さ、荘厳さを醸し出すことができるのです。これこそが「屋根・軒周り」とともに、社寺建築の醍醐味と言えるでしょう。

宮大工として、その仕事に従事している者でなければ、すべてを覚える必要はありませんが、その一部をご紹介します。

  • ・向拝柱(ごはいばしら)
  • ・虹梁(こうりょう)
  • ・海老虹梁(えびごうりょう)
  • ・大斗(だいと)
  • ・蛙股(かえるまた)
  • ・巻斗(まきと)
  • ・実肘木(さねひじき)
  • ・唐破風(からはふ)
  • ・木負(きおい)
  • ・茅負(かやおい)
  • ・裏甲(うらごう)

このように、少し名前を挙げるだけでも沢山ありますが、書籍を見ながら、どういう場所に使うものかを理解すれば、名称を覚えることもできると思います。

また、各部材に「どんな材質を使うと美しいか」「高価になるのか」「どのようにすれば安価になるのか」ということが、だんだんと分るようになってきます。

このように、柱の太さのことや屋根のこと、社寺建築の専門用語を多少覚えることで、他の建物を見て回った時にも、見るべきポイントが深く分るようになります。「ここの虹梁は太くて立派だ」「ずいぶん凝った彫刻が施してあるな」「この建物は彫刻が少ないが、バランスが良くて美しい」などということにまで気が付くようになり、ご自分の建物の完成イメージをより明確に、ありありと描くことができて、ひとつの楽しみになるはずです。

〈参考にしていただきたい書籍〉

(1) 「古建築の細部意匠」大河出版
社寺建築の全般にわたり紹介されていますが、特に、各部材の名称や納まりについての紹介は、専門家でも手放せない本として知られています。
(2) 「図解 社寺建築 社寺図例編・各部構造編」理工学社
詳細な図面をもとに、建物全体の説明から、詳細な各部材の説明までされています。有名な神社仏閣の図面も紹介されています。
(3) 「神社仏閣図集 神社建築編、寺院建築編」建築資料研究所
社寺建築がさまざまな図面で緻密に紹介された内容となっています。細かい部分も紹介されていますが、特に建物全体の図面による説明は、施主様であってもわかりやすい内容だと思います。

※ 社寺建築に関する書籍は、上記以外にも多数あります。都市部の大型書店などでも、容易に手に入れることができます。もちろん、ネット通販などもありますが、まずは手に取って、どのような内容なのかを確認してから購入することをお勧めします。

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